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2015年6月 4日

[ review ] 江川坦庵動読演義レビュー

去る5月13日に行われた江川坦庵動読演義のレビューをお届けします。
動読演義とは動きの伴った朗読とその話の内容への講義が一緒になったもの。朗読はSPAC-静岡県舞台芸術センターの俳優奥野晃士さん。講義を担当したのは江川坦庵の物語を著した小長谷建夫さん。熱気に包まれたその時の様子をアカネさんがレビューしてくれました。


江川坦庵動読演義


江川坦庵動読演義
テキスト:『前を歩く人〜坦庵公との一日〜』 小長谷建夫 著
出演:奥野晃士(動読)、小長谷建夫(解説)
日付:2015/05/13

 江川坦庵という人物をご存知だろうか。伊豆の国市で世界遺産登録に向けて注目が集まっている韮山反射炉の礎をつくった江戸の代官である。今晩は、彼の偉業について執筆し第17回伊豆文学賞最優秀賞を受賞された小長谷さんを迎え、SPAC俳優の奥野さんによる動読で受賞作品が読み解かれた。動読とは奥野さんが朗読活動を行う中で生まれた独自のスタイルだ。

 台風一過の夜、カフェは満席となり日中の暑さにも劣らないほどの熱気で包まれていた。関係者や小長谷さんの同期生の方々も来場され、グラスを片手に和やかなムードが高まるなか奥野さんの動読がスタート。すっと作品に入り込む姿に合わせるようにして場内が静まった。


江川坦庵動読演義


 動読は2部構成となっていた。第1部では奥野さんが1節読むごとに中断し、小長谷さんが登場人物や時代背景などを創作の裏話を交えながら解説した。読者であり演者でもある奥野さんの表現と、創作者である小長谷さんの説明で歴史の1コマがそれぞれの解釈で彩られてゆき、原作とは違ったイメージが店内に広がっていった。
 休憩を挟み、第2部では奥野さん一人が物語の進行を。かの有名なジョン万次郎の目線を通して、数々の問題や衝突を抱えながらも国を良くする術を導きだしていく坦庵の姿が見事に描かれていった。国を憂い、民を想って情熱を燃やす坦庵という人物の凄みを奥野さんが巧みに表現し、目の当たりにした我々を釘付けにする。そして、歴史の1ページが今まさに目の前で動き出そうというときに物語はクライマックスを迎えた。会場は拍手喝采、奥野さんと小長谷さんは固い握手をしてお互いの絆を深めた。


江川坦庵動読演義


 途中休憩で「坦庵」という地酒が振る舞われたり、公演後に小長谷さんに花束が贈呈されたりと、2時間という短い時間ではあったが盛りだくさんの内容であった。参加された会場の皆さんもとても良い笑顔で退場されていったことを鮮明に覚えている。

 坦庵という偉大な人物がいたからこそ、後世にまでその意思が引き継がれ現在反射炉が注目を浴びている。これから韮山へ観光に向かわれようと考えている方も、まずは小長谷さんの作品を読んでその背景と坦庵の情熱を感じ取ってみてはいかがだろうか。

テキスト:アカネ(ライター)


江川坦庵動読演義

写真提供(2枚目から4枚目):Masashi HIRAO

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